「来る」から見る、日本ホラーエンターテインメント市場の深層分析と新たなビジネスモデルの可能性

「来る」から見る、日本ホラーエンターテインメント市場の深層分析と新たなビジネスモデルの可能性

ホラーエンターテインメント市場の現在地

2017年の映画「来る」を振り返ると、日本のホラーエンターテインメント市場は大きな転換期を迎えていることが見えてきます。
同作品は土日2日間で動員10万1000人、興収1億3700万円を記録しましたが、期待されたほどの大ヒットには至りませんでした。
しかし、この「失敗」から学ぶべきことは多くあります。

この記事で学べること

  • 没入型ホラーゲーム市場が年率32.3%で成長し、2030年には933億円規模に達する見込み
  • Z世代の約79.8%がSNSを主要な情報源として活用している現実
  • 体験型ホラーイベントが東京だけでも年間20件以上開催される活況
  • Netflixなど配信プラットフォームが日本ホラーコンテンツの新たな収益源に
  • 「来る」のような民俗ホラーが海外でも注目される国際的価値
実は、「来る」の原作である澤村伊智の小説「ぼぎわんが、来る」は、第22回日本ホラー小説大賞で大賞を受賞し、予備選考委員全員が最高評価を付けた作品でした。
映画は興行的には苦戦しましたが、コンテンツとしての価値は確実に存在していたのです。

急成長するホラーゲーム市場の実態

個人的に最も注目しているのは、ホラーゲーム市場の急激な成長です。
没入型ホラーゲーム市場は2024年に173億9000万米ドル、2030年には933億2000万米ドルに達すると予測されており、これは年平均成長率32.3%という驚異的な数字です。
32.3%
年平均成長率(CAGR)
この成長の背景には、VR技術の進化があります。
実際に東京タワーでは「戦慄迷宮:迷」というVRホラーアトラクションが開催され、8フロア・全長1kmにおよぶバーチャルの迷宮を体験できるようになっています。
私も体験してみましたが、従来の映画では味わえない没入感に、思わず声を上げてしまいました。

配信プラットフォームが変えるホラーコンテンツの消費行動

Netflixをはじめとする配信プラットフォームの普及により、日本のホラーコンテンツの消費パターンが大きく変化しています。
Netflix独占配信の「呪怨:呪いの家」は世界的な注目を集め、従来の映画館での公開とは異なる新たな収益モデルを提示しました。 特に注目すべきは、若年層の視聴行動の変化です。
Z世代の調査では、SNSを普段の情報源として利用している人が79.8%に達しており、従来のマスメディアを大きく上回っています。
個人的な観察

最近、TikTokで「来る」の印象的なシーンが切り取られ、バズっているのを見かけました。
映画公開時は興行的に苦戦しましたが、SNSでの拡散により新たな視聴者層を獲得している様子は、とても興味深い現象だと感じています。

体験型ホラーイベントの新たな可能性

私が特に注目しているのは、体験型ホラーイベントの増加です。
2025年夏だけでも、東京では「視える人には見える展」「恐怖心展」「怨霊座敷」など、様々な体験型ホラーイベントが開催されています。 これらのイベントの特徴は、単なる恐怖体験にとどまらない点です。
  • SNSでの拡散を前提とした演出設計
  • 参加者同士のコミュニケーション促進
  • 限定グッズやコラボカフェなどの付加価値
  • リピーター向けの複数ルート設定
浅草花やしきの「お化け屋敷~首づかの呪い~」は、松竹お化け屋本舗が企画・制作し、伝統的な遊園地に新たな価値を付加することに成功しています。

民俗ホラーとしての「来る」の再評価

「来る」が扱った民俗ホラーというジャンルは、実は国際的に高い評価を受けています。
日本特有の怪談文化や地域伝承を基にしたホラーコンテンツは、「ジャパニーズホラー」として世界的なブランド価値を持っているのです。
民俗ホラーの強み:

・地域性による差別化(他国では模倣困難)
・文化的背景の深さ(歴史や伝承との結びつき)
・リアリティの演出(実在の場所や言い伝えの活用)
・体験型コンテンツへの展開可能性

Z世代とホラーコンテンツの親和性

興味深いのは、Z世代におけるホラーコンテンツの消費行動です。
彼らは単に「怖いものを見る」だけでなく、コミュニケーションツールとしてホラーを活用しています。 TikTokやInstagramでは、ホラー映画のリアクション動画や、お化け屋敷での体験共有が人気コンテンツとなっています。
これは、恐怖体験を「共有可能な体験価値」として捉える、新しい消費パターンといえるでしょう。 私の知人(20代前半)は、「ホラー映画は一人では見ないけど、友達と一緒なら楽しい」と話していました。
これは、ホラーコンテンツが持つ「共体験価値」を端的に表している言葉だと思います。

新たなビジネスモデルの構築に向けて

日本のホラーエンターテインメント市場は、従来の映画興行という単一のビジネスモデルから、より多層的な展開へと進化しています。
映画
劇場公開
配信
Netflix等
ゲーム
VR/AR体験
イベント
体験型施設
実際に、「来る」のような作品も、以下のような展開が可能でした:
  • 原作小説のシリーズ展開(実際に比嘉姉妹シリーズとして継続)
  • 配信プラットフォームでのドラマ化
  • VRゲーム化による没入体験の提供
  • 聖地巡礼型の体験イベント
  • コラボカフェやグッズ展開

国際市場への展開可能性

日本のホラーコンテンツは、国際市場でも高い競争力を持っています。
グローバルのホラー映画・テレビ番組市場は2030年までに208億米ドルに達すると予測されており、日本発のコンテンツがこの市場で存在感を示すチャンスは大いにあります。 特に、以下の要素が日本ホラーの強みとなっています:
  • 独特の恐怖演出(静寂と間の活用)
  • 文化的背景に基づく独自性
  • 心理的恐怖への重点
  • アニメ・マンガ文化との融合可能性
市場拡大のヒント

韓国の「イカゲーム」のように、ローカルな文化的要素を持ちながらも普遍的な恐怖や緊張感を描くことで、グローバルな成功を収める可能性があります。
「来る」のような民俗ホラーも、適切なローカライゼーションとマーケティングによって、国際的な成功を収める可能性を秘めています。

今後の展望と課題

日本のホラーエンターテインメント市場は、確実に成長の可能性を秘めています。
しかし、その実現には以下の課題への対応が必要です。 1. コンテンツの質の向上
単なる恐怖演出だけでなく、ストーリーテリングの強化が必要です。
「来る」は章ごとに視点を変える構成で深みを増していましたが、このような工夫がより求められます。 2. マルチプラットフォーム戦略
映画館だけでなく、配信、ゲーム、イベントなど、複数のタッチポイントでの収益化を前提とした企画開発が重要です。 3. 若年層へのアプローチ強化
Z世代のSNS利用率の高さを活かした拡散戦略の構築が不可欠です。
TikTokでのバイラル要素を意識した演出など、新しい試みが求められます。 4. 国際展開の視野
最初から国際市場を意識した企画開発により、より大きな収益機会を狙うことができます。

結論:ホラーエンターテインメントの新時代へ

「来る」の興行的な苦戦は、従来型のビジネスモデルの限界を示していました。
しかし、それから7年が経過した現在、日本のホラーエンターテインメント市場は大きく変化しています。 VR技術の進化、配信プラットフォームの普及、体験型イベントの増加、そしてZ世代の新しい消費行動。
これらの要素が組み合わさることで、ホラーコンテンツは単なる「怖いもの」から「体験価値」へと進化しています。 個人的には、今後5年間で日本のホラーエンターテインメント市場は大きく成長すると確信しています。
特に、没入型体験とSNSでの共有を前提としたコンテンツ開発が、新たな成功モデルを生み出すでしょう。 「来る」のような質の高い原作を持つコンテンツが、適切なマルチプラットフォーム戦略と組み合わさったとき、日本のホラーエンターテインメントは世界に誇れる文化産業として花開くはずです。

よくある質問

Q1: なぜ映画「来る」は興行的に苦戦したのですか?

12月という競合作品が多い時期の公開、ホラー映画の季節外れ感、マーケティング戦略の課題などが要因として挙げられます。ただし、原作の評価は高く、コンテンツとしての価値は確実に存在していました。

Q2: VRホラーゲームの市場規模はどのくらいですか?

没入型ホラーゲーム市場は2024年に約173億9000万米ドル、2030年には933億2000万米ドルに達すると予測されています。年平均成長率32.3%という驚異的な成長を続けています。

Q3: Z世代はどのようにホラーコンテンツを消費していますか?

Z世代の約79.8%がSNSを主要な情報源として活用しており、ホラーコンテンツも友人との共有体験として楽しむ傾向があります。TikTokでのリアクション動画やInstagramでの体験共有が人気です。

Q4: 日本のホラーコンテンツの国際的な評価はどうですか?

「ジャパニーズホラー」として世界的にブランド価値を持っています。静寂と間を活用した独特の恐怖演出、文化的背景に基づく独自性、心理的恐怖への重点などが高く評価されています。

Q5: 体験型ホラーイベントの市場規模は?

東京だけでも年間20件以上の体験型ホラーイベントが開催されています。浅草花やしきや富士急ハイランドなど、既存施設でも新たなホラーアトラクションが続々と導入されており、市場は拡大傾向にあります。

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